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英国首相の英語

コロナウイルス対応に追われる世界各国のリーダーの声が日々伝えられてきます。フリーランスとして働くブログ管理者は仕事も減り、家で彼らの英語を聞きながら訓練したり、感心したりする日々です。

 

今日はイギリスのボリスジョンソン首相の言葉を紹介します。

 

彼がロンドン市長だった時に来阪したことがあり、一度だけ仕事でお会いしたことがあります。今と変わらず、ボサボサ頭で、親しみやすく気さくな感じの人でした。が、来歴を見ると結構破天荒で、トランプ大統領に負けないくらいの個性派です。しかし、今回、自身がコロナウイルスに感染し、隔離された環境から指揮をとる姿や言動が、責任感や温かみのあるものに変質してきておりとても興味深いなと思います。

 

先日出されたご本人の録画メッセージに、しゃれたこと言うなぁ!うまい!と思う一言がありました。

 

"There really is such a thing as society." (動画の最後の方です。字幕を出して見ることもできます)

 

「社会というものは本当にあるのです。」

 

当たり前のように聞こえますが、これは同じ英国の保守系の政治家、マーガレットサッチャーの語った、

"There's no such a thing as society." (社会などというものはないのです)という有名な言葉をもじったメッセージです。

 

マーガレット・サッチャーは言わずと知れた、初の女性イギリス首相であり、国有企業を次々と民営化、規制緩和を行い、彼女のとった政策は新自由主義または新保守主義と呼ばれました。先述のコメントは、1987年のインタビューで、個人主義と自助努力、自己責任を説く文脈で語られ、弱者が問題を語る時、社会のせいにしていると批判したものです。

 

同じ保守系のジョンソン首相が、今コロナウイルスに苦しむ英国において、引退した20000人もの元医療従事者が現場に戻り、75000人ものボランティアも医療現場に出ることを申し出ている状況を受け、先ほどの"There really is such a thing as society."というコメントを出したことは、とても深い意味合いがあると感じました。そしてこの危機に、見たこと、感じたことを柔軟に自分の考え方に取り込み、率直に語ることができるリーダーを持った国は幸せだと思いました。

 

このコロナウイルスのパンデミックが終わった後、世界の様相は一変しているだろうと多くの人が予想しています。

 

どこまでも効率だけを追求し無駄を省き、利益最大化のために人や制度をギリギリのところで回してきた今のシステムを見直し、危機に対応するための冗長性(ゆとり)を持ち、お互いに助け合い、都合しあって存立していく社会のモデルを模索していくという方向性になるのではないか、と思ったりします。