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映画「プリシラ」1994

 

オーストラリア映画のご紹介シリーズ、今日は「プリシラ」です。

前回ご紹介した「ミュリエルの結婚」と同じ、1994年制作です。

 

ドラァグクイーンのバーナデット、ミッチ、フェリシアがオーストラリア大陸の中心、砂漠の町アリススプリングスのホテルでのショーに出演するため「プリシラ号」というオンボロバスに乗って旅をするロードムービー。久しぶりに見ましたが、アラフォーになった今、若い時には分からなかった人生のほろ苦さや人間ドラマの味わいが沁みて、感慨深い鑑賞となりました。出発地点のシドニーの観光名所もさりげなく映されていますし、いわゆるOUTBACKと言われる内陸部の大自然も印象的に描かれており、赤茶けた土、どこまでも広い青い空、そびえ立つ岩山などオーストラリアの風土を知るのにも良い映画です。

 

中身は所々大人向きの部分があるので、子どもと一緒には見れませんが、LGBTという言葉すらない時代に、セクシュアリティやジェンダーマイノリティのテーマを逃げずにまっすぐ描いており、古びた感じがしないことに驚きました。この前年、ハリウッドではトムハンクスがエイズで亡くなる主役を演じた「フィラデルフィア」というシリアスで辛い映画がありましたが、「プリシラ」はドラァグクイーン達を主人公に据え、鮮やかな色彩とゴキゲンな音楽を用いながら、深刻なシーンも辛気臭くなりすぎないカラリとした演出にしています。オーストラリアではABBAがものすごく人気だったそうで、ミュリエルの結婚と同じく、印象的にABBAの音楽が使われています。この二作品、「本当の自分を受け入れて自由になる」という同じテーマが通底していると感じました。当時オーストラリアは、英国との関係やそれまでの白豪主義から距離をとり、少しずつアジアの一員として自国のアイデンティティを見出して行った時期であったことと無関係ではないでしょう。オーストラリア社会全体に流れていた大きな物語だったのではないかな、と思います。

 

外国映画としてアカデミー衣装デザイン賞を受賞しているだけあって、アリススプリングスのショーではオーストラリアの動物や名所をモチーフにした奇抜で楽しい衣装に笑ってしまいました。

 

のちに「マトリックス」のエージェントスミス役でブレークしたヒューゴ・ウィーヴィング、「メメント」「タイムマシン」などの作品でアメリカでも活躍するガイ・ピアースが主役を演じているのも見どころです。

 

最後に、去年同性婚がオーストラリアで合法化されたおり、議員が議会でプロポーズをした映像をつけておきます。議長が速記者に「答えはイエスだったということも記録するように」と指示するなど、とても素敵で感動的なシーンです。問題を乗り越えながら、着実に多様性を受け入れる社会を実現してきたオーストラリアの姿がここにあります。

 

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